あのスクリーミング・イーグルの姉妹ワイナリーとして知られる「ザ・ヒルト(サンタ・リタ・ヒルズ)」「ホナータ(バラード・キャニオン)」の両ワイナリーで醸造責任者を務めるマット・ディーズ氏が来日しました。
(不動産で成功を収めたジーン・フィリップ女史は1986年にオークヴィルに土地を購入しました。小さな畑の葡萄は近隣のワイナリーに売却しましたが、とある1つの小さな区画の葡萄のクオリティが素晴らしく、この葡萄からワインを醸造することにしました。当時まだ無名だったハイジ・ピーターソン・バレットをワインメーカーに迎えました。スクリーミング・イーグルの誕生です。ファースト・ヴィンテージの1992年にロバート・パーカーが99点を付けました。1997年でパーカー100点獲得。ご高齢のため?ジーン・フィリップ女史は2006年にチャールズ・バンクスにブランドを売却しました。)
サンタ・バーバラの土地に興味を持ったチャールズ・バンクスは2000年に「Jonata ホナータ」を設立しました。アスパラガスを栽培したほうがいい、と言われた土地に葡萄を植えました。シリアの砂土壌に葡萄の樹を植えるのは大きな博打でしたが、ミシェル・ロランやマット・ディーズによりプレミアムワインを生み出すまでの畑に成長しました。マット・ディーズはカンザスシティ出身で、大学での専攻は地質学です。土壌オタクらしいです(苦笑)。東海岸でワイン造りに携わりましたが、さらなるワイン造りを求めてナパ・ヴァレーへ移りました。あのスクリーミング・イーグルを再びパーカー100点に返り咲かせたアンディ・ベクストファーの下でワイン造りを学びました。またニュージーランドでも3年ほどワイン造りに携わり経験を積みました。スタッグリン・ファミリーでワインメーカーを務め、その後ホナータの立ち上げに参加しました。その後サンタ・リタ・ヒルズに設立された「The Hilt ザ・ヒルト」にも参加しました。
(チャールズ・バンクスは2009年にスクリーミング・イーグルそしてホナータから身を引きました。スクリーミング・イーグル買収の共同オーナーだったスタン・クロンキーが現在オーナーを務めます。スタン・クロンスキーはバスケットボールの NBA デンバー・ナゲッツ、アメリカンフットボールの NFL セントルイス・ラムズ(元ロサンゼルス・ラムズ)のオーナーでもあり、そしてイギリスのプレミアムリーグのアーセナルの筆頭株主でもあります。またブルゴーニュのボノー・デュ・マルトレイを所有します。)
マット・ディーズ氏からサンタ・バーバラのテロワールについてお話がありました。そしてザ・ヒルトとホナータのワインについてお話がありました。ザ・ヒルトもホナータもエステートワインであることが最大の特徴であると。畑を所有し葡萄を自ら栽培しワインを自ら醸造することが最大の特徴であると。栽培では持続可能な農業と環境に力を注いでポリフェイス農法を行い、醸造では畑のテロワールをそのまま表現させる透明感のあるワイン造りを行います。
テイスティングはこちらです・・・(価格は輸入元上代税抜き価格です・・・)
The Hilt Estate Chardonnay Sta. Rita Hills 2019
★ザ・ヒルト エステート シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2019 ¥6,500
The Hilt Bentrock Vineyard Estate Chardonnay Sta. Rita Hills 2019
★ザ・ヒルト ベントロック・ヴィンヤード エステート シャルドネ サンタ・リタ・ヒルズ 2019 ¥20,000
The HIlt Estate Pinot Noir Sta. Rita Hills 2019
★ザ・ヒルト エステート ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2019 ¥6,500
The Hilt Bentrock Vineyard Estate Pinot Noir Sta. Rita Hills 2019
★ザ・ヒルト ベントロック・ヴィンヤード エステート ピノ・ノワール サンタ・リタ・ヒルズ 2019 ¥20,000
Jonata “Flor” Sauvignon Blanc Ballard Canyon Santa Ynes Valley 2021
★ホナータ “フロール” ソーヴィニヨン・ブラン バラード・キャニオン 2021 ¥16,000
Jonata “Todos” Red Blend Wine Ballard Canyon Santa Ynez Valley 2018
★ホナータ “トドス” レッドブレンドワイン バラード・キャニオン 2018 ¥9,000
Jonata “El Desafio” Cabernet Sauvignon Ballard Canyon Santa Ynez Valley 2019
★ホナータ “エル・デサフィオ” カベルネ・ソーヴィニヨン バラード・キャニオン 2019 ¥35,000
「ザ・ヒルト」は、シャルドネとピノ・ノワールに特化したワイナリーです。太平洋から内陸約20kmの、海風の影響を大きく受けるサンタ・リタ・ヒルズの南西の一角に位置します。Radian ラディアン、Bentorock ベントロック、Peruta del Mar プエルタ・デル・マーの3つの畑を所有します。土壌の表面は岩で覆い尽くされています。海風の影響を大きく受ける冷涼地ですので、岩が太陽の熱を受け止め、夜間も温かさを保つことができるとのことです。
エステート・シャルドネのクローンは76と95とS+Bから。フレンチオーク(34%新樽と56%旧樽)とステンレスタンク(10%)で醸造。マロラクティック発酵は30%。熟成は11ヶ月です。透明感のある黄金色。柑橘系果実のアロマ。清涼感のある瑞々しい果実味です。生牡蠣を口に入れた時の海水(塩味)を感じます。アントニオ・ガローニが92点、ジェブ・ダナックが92点を付けました。ベントロック・ヴィンヤード・シャルドネは、平均樹齢12年のシャルドネで、52%ブロック18(クローン95)、20%ブロック17(クローン76)、16%ブロック1(クローン76)、12%ブロック19(クローン95)で、フレンチオーク(35%新樽と65%旧樽)で12ヶ月熟成。その後ステンレスタンクで6ヶ月熟成。エステート・シャルドネに比べるとやや濃い目の色合い。ネクタリン、アプリコットのアロマ。カモミールも。ゴージャスなアロマ。冷ややかな太陽光をたくさん浴びた(重くはないが)ふくよかな果実味です。生産量は僅か294ケースです。アントニオ・ガローニが95点、ジェブ・ダナックが95点を付けました。
エステート・ピノ・ノワールのクローンはカレラ、スワン、マウント・エデン、ポマール、37、113、114、115、667、777、828など。全房発酵。フレンチオーク(8%新樽と92%旧樽)で11ヶ月熟成。ラズベリーやブラックチェリーのアロマ。茶葉も。華やかでシルキーなテクスチャーで、かろやかにトーストやアーシーさが漂う果実味です。アントニオ・ガローニが93点、ジェブ・ダナックが93点を付けました。ベントロック・ヴィンヤード・ピノ・ノワールは7つの異なる区画からで、特に丘の上や南東向き斜面のディジョンクローンやヘリテージクローンが主となります。フレンチオーク(20%新樽と80%旧樽)で12ヶ月熟成。ブラッドオレンジやブラックチェリーのアロマ。ミントやセージも。凝縮し引き締まった果実味は非常に洗練された味わいです。しっかりしながらきめ細やかなタンニン。マットさんが目指すピノ・ノワールはいい意味で味わいにインパクトのあるピノ・ノワールとのことです。生産量は僅か194ケースです。アントニオ・ガローニが94+点、ジェブ・ダナックが97点を付けました。シャルドネとピノ・ノワールの醸造は新樽の使用は控えめで、タンニンを和らげるためにゆっくりと時間をかけて抽出しているとのことです。
ザ・ヒルトから内陸に約20kmほど東の、バラード・キャニオン・サンタ・イネズ・ヴァレーに「ホナータ」の畑が位置します。この地は砂地で、まじにアスパラガスを植えたほうがいいと言われた土地です。砂土壌に葡萄の樹を植えるのは大きな博打でしたが、砂土壌は養分が少なく水はけが良いため、葡萄樹はストレスなく地中深く根を伸ばしました。灌漑の有無、そして植樹の数や間隔をいろいろ実験しながら畑を作り上げています(現在も進行中です)。ホナータの葡萄は、樹に房は少なく、非常に小粒の葡萄です。
“フロール” ソーヴィニヨン・ブランは、90%ソーヴィニヨン・ブラン(ムスケクローン)、10%セミヨン(クローン2)で、フレンチオーク(40%新樽と50%旧樽)とステンレスタンク(10%)で醸造。マロラクティック発酵なし。ライムやレモンの皮。柚子。旨味のある柑橘系果実の果実味ですが、重くなく爽やかな味わいです。ソーヴィニヨン・ブランは自根の樹です。1つの樹に2房ほどです。生産量は500ケースです。
“トドス” レッドブレンドワインは、42%シラー、21%カベルネ・ソーヴィニヨン、14%プティ・ヴェルド、9%プティ・シラー、その他です。スミレやブラックチェリーのアロマ。ナツメグやセイボリー。そしてアーシーな風味。(重くはありませんが)ふくよかなアタック。エネルギッシュな赤黒の果実味。通常60%前後がシラー、20%前後がカベルネ・ソーヴィニヨンで、残りはその年の状況によって変わります。このワインのセパージュ比率は、ホナータの畑の比率にとても似ているので、まさにホナータの土地の個性を表していると言えます。生産量は2,640ケースです。アントニオ・ガローニが92点、ジェブ・ダナックが93―95点を付けました。そして最後に “エル・デサフィオ” カベルネ・ソーヴィニヨンです。エル・デサフィオは「反抗」「反逆」の意味。アスパラガスの土地から素晴らしいワインを造り上げた、ということを意味しています。カベルネ・ソーヴィニヨンのクローンは、4、7,15,337で、94%カベルネ・ソーヴィニヨン、3%メルロー、3%プティ・ヴェルドで、フレンチオーク(80%新樽)で20ヶ月熟成。ローズマリー、カシスのアロマ。土。鉛筆の芯。ボルドーに感じる埃っぽさもあり。ミントなどのハーブの風味もあり、エスプレッソのような風味もあり。パワフルでフルボディですがハードなイメージではありません。ナパのフルボディのカベルネ・ソーヴィニヨンとは少しタイプが違います(果実味が柔らかくタンニンが優しいかなと)。ちなみにマットさんは80年代のボルドーに憧れてワイン業界に入ったそうです。生産量は僅か459ケースです。アントニオ・ガローニが97+点、ジェブ・ダナックが95+点を付けました。
セミナー会場に入るとまだ少し時間があるようで。先に挨拶しちゃおっと。「はじめまして。ツミタです。カリフォルニアワインに特化した小さなショップを経営してます。」「私はマット・ディーズです。」「あの~私のスペシャルなシャツを見てください。」「オオ!ジャイアンツ!」「全てカリフォルニアのオーナーとワインメーカーのサインです。」「オーマイガー!」「例えばサンタ・バーバラだと・・・チャッド・メルヴィルさん、グレッグ・ブリュワーさん、こっちにラジャ・パーさんとサシ・ムーアマンさん、そしてジム・クレンデネンさん。」「みんな知り合いだよ。チャッドやグレッグは親友だよ。凄いな。。。」「サイン頂戴できますか?」「もちろんするよ。するよ。」とマットさん大はしゃぎです(苦笑)。「セミナー終わったら写真撮りましょう。」「もちろん撮ろう。撮ろう。」と(再苦笑)。
(ちなみに、マットさんは、チャッドさんやグレッグさんが造り上げたピノ・ノワールのようなピノ・ノワールを造りたかったんだ、とおっしゃっていました。憧れの方のそばにサインを書けてとても喜んでいました。)
ということで、セミナー終了後に恒例のツーショット写真です。マットさんなにか書き足りないのかな。「ペンある?」と言われて、またまた書き加えました。Go! Kevin Williams と書き加えたのですが、この人誰? 私知らんとです(苦笑)。同行のフランス人(たぶんボノー・デュ・マルトレイの関係者)も大笑いで写真撮ってました。ちなみに師匠のアンディ・エリクソンのサイン見せるの忘れました(残念)。
袖口にチャッド・メルヴィルさんで、袖と胴体の縫目のところにグレッグ・ブリュワーさんで、マットさんのサインはグレッグさんの左側に。
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