「ニューヨークワイン・セミナー」
エグゼクティブ・シェフであり、マスター・ソムリエであり、そして自らワインも造り出しているクリストファー・ベイツ氏が初来日しました。まさに食とワインの世界で間違いなくトップクラスにいる凄い方です。輸入元主催のセミナーに参加しました。
なにが凄いかと言うと、クリストファー・ベイツ氏は、「シェフ」「ソムリエ」「ワインメーカー」という3つの顔を持ち、その全てにおいて超一流のレベルにあることです。
シェフとしては、自身がオーナー兼エグゼクティブ・シェフを務めるフィンガー・レイクスにある F.L.X. Table がアメリカ全国紙 USA TODAY が選ぶ2017年の”全米ベスト・ニュー・レストラン”の第1位に選ばれました。
ソムリエとしては、世界に249人しか存在しない飲料サービス業界における最高峰の資格である MS マスター・ソムリエ を持ち(2013年に199番目で取得)、セミナーやソムリエのトレーニングで世界中を飛び回っています。シェフとしての MS 取得は世界初です。
そして地元フィンガー・レイクスでは Element Winery でワインを造り出しています。ガレージ・ワイナリーながら、彼が造り出したワインは、世界№1レストラン Eleven Madison Park をはじめとした NYC の超一流レストランでもオンリストされている知る人ぞ知る存在のワインです。
クリストファー・ベイツはニューヨーク州生まれ。幼少時代から料理に興味を持ち、14歳からレストランで働き始めました。世界屈指のコーネル大学ホテル経営学部に進学。構内にあるホテルでシェフとしての経験を積みました。そしてワインにも興味を持ち始めた彼はその後ドイツ、イタリアでワイン造りを修行。アメリカ帰国後は、2つのルレ・エ・シャトー加盟のホテルでエグゼクティブ・シェフ、そしてジェネラル・マネージャーとして活躍。その後ニューヨーク州に戻り、ワイン造りを始めました。
2005年父ボブ・ベイツと共に Element Winery を設立。フィンガー・レイクス西端のアークポートに醸造施設を持つガレージ・ワイナリーです。フィンガー・レイクスのテロワールを追求し、冷涼な気候で育つ葡萄の特徴を最大限に活かし、繊細ながらも酸とアルコールのバランスのとれたワインを造り出しています。年間生産量は1,000ケースにも満たず、ニューヨークでも極一部のレストランやショップでのみの販売です。
2016年ドイツでワイン造りを学んでいる時に出会った妻イザベルと共にフィンガー・レイクスの中心地ジェニーバで F.L.X Table をオープン。ホームパーティーから着想した14席のみのレストランです。地元で採れる季節の食材をふんだんに使用した料理を全ての客が同時に食べ始める形式になっています。2017年 USA TODAY の”全米ベスト・ニュー・レストラン”で見事第1位に輝きました。
クリストファー・ベイツ氏からニューヨークワインの歴史と現状、そしてマスター・ソムリエについてお話がありました。ニューヨークワインを語る上で、アメリカ原産のラブルスカ種とワイン醸造のヴィニフェラ種については必要不可欠となります。これらの葡萄がニューヨーク州の気候(寒さ)の中でどう適応してきたか、などのお話もありました。マスター・ソムリエについてはまたの機会に。テイスティングはこちらです。(価格は輸入元税抜価格です。)
Keuka Lake Vineyards Dry Riesling Finger Lakes
★キューカ・レイク ドライ・リースリング 2015 ¥4,300
Ravines Wine Cellars Dry Riesling Finger Lakes
★レヴィーンズ ドライ・リースリング 2013 ¥3,700
Element Winery Chardonnay Finger Lakes
★エレメント シャルドネ 2014 ¥5,000
Element Winery Pinot Noir Finger Lakes
★エレメント ピノ・ノワール 2013 ¥6,800
Hermann J. Wiemer Cabernet Franc Seneca Finger Lakes
★ハーマン・J・ウィーマー カベルネ・フラン 2011 ¥4,800
Element Winery Syrah Finger Lakes
★エレメント シラー 2012 ¥6,800
ニューヨーク州のワイン生産量は、カリフォルニア州、ワシントン州に次いで全米第3位です(4位はオレゴン州です)。アメリカ国内にて商業ベースでワインが生産されたのはニューヨーク州の1839年が最初です(最古のワイナリーが現存します)。上記のワインは、ニューヨーク州の2大生産地の1つで、ニューヨーク州最大の生産地であるフィンガー・レイクスのワインです。南北に細長い湖が並ぶことから名付けられました。この地域は冬には氷点下20℃にもなります。ですが水は蓄熱効果があるため、冬は比較的暖かく、夏は比較的涼しくなります。特にリースリングの栽培地として有名です。
キューカ・レイク・ヴィンヤードは1997年キューカ湖西岸に設立されたブティック・ワイナリー。白い花、レモンの華やかな香り。爽やかなながらややオイリーな口当たり。しっかりした酸。度数は低いがストラクチャーあります。ALC11,6%。レヴィーンズ・ワイン・セラーズは2000年にフランス・プロヴァンスでワイン造りをしていた一族出身者により設立されたワイナリー。白い花、洋梨の香り。洗練された綺麗な果実味。ミネラル豊かで、こちらもしっかりとした酸が印象的です。2012年はワイン・スペクテーター年間トップ100ワインに選出。ALC12,4%。そしてクリストファー・ベイツが設立したエレメント・ワイナリーです。シャルドネは発酵、熟成共にステンレスタンクで。熟したリンゴやパイナップル。ブリオッシュ。熟した果実の味わいですが、酸がしっかりしているため重さは感じません。熟成期間が36ヶ月と長いため、樽熟成させたような風味を感じますが、デリケートさを持ち合わせます。ALC11,8%。ピノ・ノワールは自然酵母で発酵後、最初の1年間はSO2を一切添加せず、500Lの古樽にて澱と一緒に24ヶ月熟成。チェリーやバラの香り。いわゆる出汁系の風味の、上品で華やかな果実味。しっかりしてるがソフトなタンニンです。2013年はフィンガー・レイクスにとっては厳しい年だったようです。僅か98ケースです。ALC11,5%。ハーマン・J・ウィーマーは1979年ドイツ・モーゼルで300年以上に亘りワインを造り続けてきた一族によりセネカ湖左岸に設立されたワイナリー。ブラックチェリーの香り。ハーブやスパイスも。ほのかにグリーンっぽい風味を感じさせる果実味ですが、フルーツの風味も存在します。タンニンもしっかりあり、熟成の可能性を感じます。カベルネ・フランはカベルネ・ソーヴィニョンより寒さを好む?(耐えうる)品種とのこと。ALC12,5%。最後にエレメントのシラーです。ニューヨーク州としては非常に珍しい品種です。比較的温暖な生産地の印象があるシラーですが、クリストファー・ベイツはニューヨーク州の気候にも適応すると考え、今この品種に注目しています。全房のまま自然酵母で発酵。SO2はMLFまで添加しない。500Lの古樽にて澱と共に24ヶ月熟成。プラム、ペッパーの香り。燻製の肉を思わせる風味。重たくないがしっかりとした果実味としっかりとした酸。いわゆる新大陸のシラーとは異なるキャラクターですが。これも熟成の可能性を感じます。ALC12,6%。
どのワインもアルコール度数は低め。華やかなでしたたかな旨味のある果実味をしっかりした酸が包み込みます。ニューヨーク州のワインはデリケートでバランスのとれた味わいが特徴。クリストファー・ベイツ氏は今回の来日で本物の和食とのマリアージュを楽しみにしているようです。
クリストファーさんはお髭もじゃもじゃの豪快な風貌ですが、コメントは理論的で非常に知的な印象の方でした。ちなみに今回はサインは頂戴しませんでした(サイン頂戴する時間がなく後悔してますが・・・)。まあ彼はニューヨーク生まれのニューヨーク育ちですから、応援するとしたらきっとあの球団ですよね(笑)。。。
【サーモン・ラン リースリング フィンガー・レイクス 2015】(2017年8月18日、19日)
【今急成長を遂げている、注目のニューヨークワインです!】(2016年2月24日)