ナパ・ヴァレーにおけるメルロー造りのパイオニアである「ダックホーン・ヴィンヤーズ」。ダックホーンは現在6つのブランドを持ちますが、その1つである「パラダックス」のワインメーカー、ドン・ラボード氏が初来日しました。また、海外輸出部長のブライアン・ボストウィック氏は3度目の来日となりました。本日輸入元主催のセミナーに参加してきました。
Three Palms Vineyard Merlot Napa Valley |
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まずはブライアン・ボストウィック氏からダックホーン社についてお話がありました。ダックホーン・ヴィンヤーズは、1976年ダン(ダニエル)&マーガレット・ダックホーン夫妻によって設立されました。78年に初めて葡萄を収穫し、800ケースのカベルネ・ソーヴィニヨンと同じく800ケースのメルローをリリースしました。当時はブレンド用にしか使われていなかったメルローを単独使用したことで注目を浴びました。ダックホーンはナパ・ヴァレーにおけるメルロー造りのパイオニアであり、ダックホーンと言えばメルロー、メルローと言えばダックホーン、と言われる理由はここにあります。(現在ナパ・ヴァレーには500に近いワイナリーがありますが、ダックホーン・ヴィンヤーズはナパ・ヴェレーで40番目に登録されたワイナリーでした。)
現在ダックホーン社は6つのブランドを持ちます。まずは「ダックホーン・ヴィンヤーズ(ナパ・ヴァレー)」です。ナパ・ヴァレー各地に所有する自社畑から極上のカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローを生産しています。ダックホーン最初のメルローは、ナパ・ヴァレー屈指のメルローのシングル・ヴィンヤードとして有名だったスリー・パームス・ヴィンヤードの葡萄から造られました。2015年5月ダックホーンは長年の夢を叶え、この畑を買い取り自社畑としました。2番目のブランドとして誕生したのが「パラダックス(ナパ・ヴァレー)」です。1994年がファースト・ヴィンテージです。カリフォルニア特有の品種であるジンファンデルを主体にカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドした、プレミアム・レッドブレンドワインを造り出しています。イタリアのティニャネロに代表される、自国固有の葡萄にカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしたワインのように、パラダックスはスーパー・トスカーナならぬスーパー・カリフォルニアと言えます(笑)。「ゴールデンアイ(アンダーソン・ヴァレー)」はアンダーソン・ヴァレー(メンドシーノ)のピノ・ノワールに特化したブランドです。1997年がファースト・ヴィンテージです。元々ゴールデンアイはアンダーソン・ヴァレーのピノ・ノワールとして高い評価を得ていましたが(最高はパーカー98点)、2009年1月オバマ大統領の就任昼食会でサーブされ、さらに注目されるようになりました。「デコイ(ソノマ・カウンティ)」は元々はダックホーン・ヴィンヤーズのセカンド的存在のワインとしてスタートしましたが、現在は独立したブランドとしてソノマ・カウンティ各地の畑の葡萄から様々な品種のワインを造り出しています。「マイグレーション(ルシアン・リヴァー・ヴァレー)」も元々はゴールデンアイのセカンド的存在のワインとしてスタートしましたが、現在は独立したブランドとしてルシアン・リヴァー・ヴァレーの葡萄からシャルドネとピノ・ノワールを造り出しています。そして6番目のブランド「キャンバスバック(ワシントン州)」はダックホーンのブランドでは初めてカリフォルニア州以外のワインとなりました。ワシントン州の、カベルネ・ソーヴィニヨンの銘醸地として名高いレッド・マウンテンに自社畑を購入し、ワインを生産し始めました。2012年がファースト・ヴィンテージです。
Paraduxx 10th Anniversary Red Wine |
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ワインメーカーのドン・ラボード氏からパラダックスについてお話がありました。ダン・ダックホーン氏は、ティニャネロ(イタリア)やベガ・シシリア(スペイン)を飲んでいたく感銘し、ナパ・ヴァレーでもナパ独自の赤ワインを造れないものかと考えました。そしてカリフォルニア特有の品種であるジンファンデルを主体にカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドしたプレミアム・レッドブレンドワインを造り出しました(自国固有の品種にカベルネ・ソーヴィニヨンをブレンドするスタイル。ティニャネロはサンジョヴェーゼにカベルネ・ソーヴィニヨン、ベガ・シシリアはテンプラニーリョにカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド)。パラダックスは、スーパー・タスカンならぬ、スーパー・スパニッシュならぬ、まさにスーパー・カリフォルニアです(笑)。1994年がファースト・ヴィンテージです。パラダックスのベースとなるのはジンファンデルとカベルネ・ソーヴィニヨンという、一見矛盾した、または不合理のようなブレンドで、実際は調和した美味な味わいになるというパラドクス(逆説)とダックホーン・ファミリーのダックを掛け合わせました。ファースト・ヴィンテージからカリフォルニア北部の水鳥を描くアーティストの作品がラベルを飾りました。つがいの2羽の鴨を描いた、スタンプのようなラベルはコレクターもいるほどの人気でした。残念ながらこのラベルは2008年で終了。2009年からラベル(モノトーンラベル)が変更になりました。
パラダックスの目標は現代的なナパ・ヴァレーのレッドブレンドワインです。ジンファンデルに由来するブルーベリーやスパイスの風味と、カベルネ・ソーヴィニヨンに由来するコクやボディが見事にマッチしています。濃厚ながら、エレガントでバランスがとれているところが魅力です。まさにカリフォルニア、ナパ・ヴァレーならではの味わいです。パラダックスは、以前は約 2/3 がジンファンデルで残りがカベルネ・ソーヴィニヨンでしたが、2012年からスタイルを変え、約 2/3 がカベルネ・ソーヴィニヨンで残りがジンファンデルになりました。ナパ・ヴァレーと言えばやはりカベルネ・ソーヴィニヨン。やはりカベルネ・ソーヴィニヨンのファンは多いので、カベルネ・ソーヴィニョンをメインとしました。(ナパ・ヴァレーにおけるカベルネ・ソーヴィニョンの生産は増えているのですが、逆にジンファンデルの生産が減少していることも理由の1つのようです。)たった1つのワインから始まったパラダックですが、現在パラダックスでは17のワインを生産しています。2005年にはヨントヴィルにパラダックス専用のワイナリーが完成しました。近隣にパラダックスの自社畑レクター・クリーク・ヴィンヤードがあります。(ピーター・マイケルやスクリーミング・イーグルの畑が近くにあります。)ワインメーカーのドン・ラボード氏は、トレフェセン、フランシス・コッポラを経てダックホーンに入社。デコイでワインメーカーを務め、2014年よりパラダックスのワインメーカーとなりました。
テイスティングはこちらです・・・(価格は輸入元税抜価格です・・・)
Paraduxx Proprietary Red Wine Napa Valley 2014
★パラダックス プロプライエタリー レッド・ワイン ナパヴァレー 2014 ¥6,000
Paraduxx Atlas Peak Red Wine Napa Valley 2014
★パラダックス アトラス・ピーク レッド・ワイン ナパ・ヴァレー 2014 参考品
Paraduxx Ridgeline Vineyard Red Wine Alexander Valley 2014
★パラダックス リッジライン・ヴィンヤード レッド・ワイン アレキサンダー・ヴァレー 2014 参考品
Paraduxx Cork Tree Vineyard Red Wine Napa Valley 2014
★パラダックス コルク・ツリー・ヴィンヤード レッド・ワイン ナパ・ヴァレー 2014 参考品
Paraduxx Howell Mountain Red Wine Napa Valley 2014
★パラダックス ハウエル・マウンテン レッド・ワイン ナパ・ヴァレー 2014 参考品
ファースト・ヴィンテージ1994年から続くパラダックスを継承するワインがこのプロプライエタリー・レッド・ワインです。2012年からカベルネ・ソーヴィニヨンが主体となりました。2014年は、65%カベルネ・ソーヴィニヨン、30%ジンファンデル、5%メルローで、95%フレンチオークと5%アメリカンオーク(50%新樽)にて18ヶ月熟成。カシス、ブルーベリーの香り。カベルネ・ソーヴィニヨンに由来するミントやインクの風味と、ジンファンデルに由来するスパイスの風味が溶け合っています。濃縮した果実味ですが、エレガントさもあります。ジンファンデル主体だった以前の味わいと比べると、やや甘味が抑えられドライな味わいになったかなと。個人的には以前のスタイルのまま続けてほしかったですが(涙)。
以下のワインは残念ながら日本未入荷です。ティニャネロやヴェガ・シシリアを目標にスタートしたパラダックス。現在おもしろいワインを生産しています。アトラス・ピーク・レッド・ワインはイタリアの「ティニャネロ」に影響を受けたワインです。あのアンティノリがアトラス・ピークに所有する畑から。55%カベルネ・ソーヴィニヨン、45%サンジョヴェーゼで、95%フレンチオークと5%アメリカンオーク(60%新樽)にて18ヶ月熟成。ドライハーブ、スパイスの香り。クランベリーやブラックチェリーの赤系の果実味が主体。サンジョヴェーゼの風味もよく表れていて、オールドワールドとカリフォルニアの両方の風味を感じ取れます。リッジライン・レッド・ワインはスペインの「ヴェガ・シシリア」に影響を受けたワインです。葡萄はソノマ、アレキサンダー・ヴァレーからで、ワインメーカーのドン・ラボードのお気に入りの畑から。55%テンプラニーリョ、45%カベルネ・ソーヴィニヨンで、95%フレンチオークと5%アメリカンオーク(60%新樽)にて18ヶ月熟成。土っぽさや埃っほさを感じる香り。カシスやブラックベリーのドライな風味。柔らかな口当たりで、パワー一辺倒ではないふくよかで濃縮した果実味。どこかボルドーを思わせるような味わいがあります。コルク・ツリー・レッド・ワインはアルゼンチンの「ボデガス・カロ」に影響を受けたワインです。ナパ・ヴァレー南、オークノールの東に位置する自社畑コルク・ツリーから。67%マルベック、18%メルロー、15%カベルネ・ソーヴィニヨンで、95%フレンチオークと5%アメリカンオーク(60%新樽)にて18ヶ月熟成。熟した果実の香り。湿った森の土の香りも。プラムやブルーベリーなどの熟した果実味で、濃縮感は十分ありますがややジューシーな口当たりです。十分なタンニンですが、深く柔らかく、重い感じではありません。ハウエル・マウンテン・レッド・ワインはオーストラリアの「グランジ」に影響を受けたワインです。ハウエル・マウンテンに位置する自社畑スタウトの葡萄を使用。60%カベルネ・ソーヴィニヨン、40%シラーで、95%フレンチオークと5%アメリカンオーク(60%新樽)にて18ヶ月熟成。黒系果実の凝縮した香り。ブラックペッパー、そしてオークの香り。肉(ベーコン)の焦げた風味。凝縮感のある黒系の果実味。力強いタンニンです。長期の熟成も期待できそうです。以上5つのワインはどれも色あいは濃厚です。アルコール度数はほぼ15度。たしかに濃厚濃縮の果実味ですが、重いという印象はありません。特に最初のプロプライエタリー・レッド・ワインは相変わらずのチャーミングさも感じます。
パラダックスはコレクターには人気のワインでしたが、評論家やレストランの評価は正直いまいちでした。ですがカベルネ・ソーヴィニヨン主体にスタイルを変えてから評価が高まってきたそうです。世界的なワイン評論家であるジェームス・サックリングが2014年プロプライエタリー・レッド・ワインに93点を付けました。またワイン&スピリッツ誌の 28th レストラン・ポール・アワードでは48位にランクインされました。歴代のパラダックスの中では最高の評価を受けました。ちなみにパラダックスは個人的に大好きなワインです。
本日もセミナー終了後は速攻で帰宅の予定でした。セミナー前に運良くご挨拶できました。まずは3度目のご対面となった輸出部長のブライアンさんと。「ご無沙汰です。」「また会えて嬉しいよ。」そしてドンさんと。「はじめまして。私パラダックスを愛してます。ですから私のシャツにサインを頂戴したいのですが。」これを聞いていたブライアンさんは大笑い。「わお!凄いな!」「ジャイアンツのファンですか?」「もちろん!」「グー!」「このジャージにサインできて光栄だよ。これ着ながらセミナーでワインの説明をさせてくれ。」と(喜)。ドンさんはルイジアナで生まれ育ち、その後ヒューストンへ。ヒューストン・アストロズのファンかと思いきや、大のジャイアンツファンでしたぁ(再喜)。これでダックホーンからは8名の方からサイン頂戴しましたぁ(笑)。
ドンさんと・・・ | |
ブライアンさんも・・・ | |
Go! Duckhorn and Go! Giants | |
【新ラベルで登場です!リニューアルしたパラダックス(ダックホーン)です!】(2012年8月15日)
【素敵なラベルだったのに・・・このヴィンテージで終了です(涙)・・・】(2012年1月28日)