ブルゴーニュファンをも唸らす、テロワールを反映させた非常に繊細でエレガントなシャルドネとピノ・ノワールを造り出している「リトライ」。オーナー兼ワインメーカーのテッド・レモン氏が2度目の来日です。本日輸入元主催のセミナーに参加してきました。
フランス・ディジョン大学で醸造学の学位を取得したテッド・レモン氏はブルゴーニュのトップ生産者の元で経験を積み、ギィ・ルーロではコート・ドール初のアメリカ人醸造長に抜擢されたことで有名です。前回来日(2年前)のセミナーではそのほとんどがバイオダイナミックのお話でしたが、今回は自身のブランドであるリトライについてのお話が中心となりました。
ワインと全く無縁だったテッド・レモン氏。1978年フランス文学を学ぶためにディジョン大学へ入学。1980年にニューヨーク州の東、ロードアイランド州のブラウン大学を卒業しました(専攻はフランス文学)。フランスと言えばワイン。フランス好きのテッド・レモンはその後フランスへ戻り、インターンシップとしてドメーヌ・デュジャックに参加します。そしてディジョン大学で醸造学を取得。ジョルジュ・ルーミエ、ブリュノ・クレール、パラン、ド・ヴィレーヌでも醸造経験を積みました。1982年アメリカへ戻り、カリフォルニアへ。インターンシップとしてカレラに参加(収穫)。そしてまたフランスへ。なんと最高醸造責任者としてムルソーで有名なギィ・ルーロに招かれました(1982年から1984年まで)。そしてアメリカへ帰国。またまた最高醸造責任者としてシャトー・ウォルトナーへ招かれました(1985年から1992年)。「フランスのワインメーキングは非常に論理的で、完成された伝統を継承していくのがフランスワインの世界」とテッド・レモンは述べました。(残念ながらギィ・ルーロでは一家の後継ぎが戻ってくるまでの中継ぎだったようです。また名家ゆえに新しい取り組みができなかったようです。)ブルゴーニュで学んだことは、エレガントさの重要性とテロワールの重要性の2つであると述べました。ナパ在住時(シャトー・ウォルトナー時代)にはシャルドネとピノ・ノワールのスタディグループを作りました。メンバーには、ヘレン・ターリー、スティーブ・キスラー、バート・ウイリアムス、トニー・ソータなどの現在カリフォルニアのシャルドネとピノ・ノワールのトップ生産者がいました。世界中のシャルドネとピノ・ノワールを飲み、カリフォルニアのワインはブルゴーニュのグランクリュに決して劣らないのではないかとテッド・レモンは感じました。そして自らワインを造る決心をし、土地を探し始めました。北はワシントン州、オレゴン州、南はカリフォルニア州のサンタ・バーバラまで。オレゴン州のウィラメット・ヴァレーはかなり気に入ったようですが、最終的に選んだのがカリフォルニア州のノース・コーストの冷涼な海岸線(リトライ)。1993年妻のハイジと一緒に小さなワイナリー「リトライ」を設立しました。リトライ設立時はカリフォルニアはいわゆるビッグワイン(カルトワイン)の時代。繊細さを求めるリトライのワインは当初あまり高い評価を受けることはありませんでしたが、食事と共に楽しむエレガントなファインワインを探し求めていたソムリエ達に見い出され、リトライは次第に名声を高めて行きました。リトライのワインは、ビック(カルト)なワインではなく、テロワールを重視した料理に合うワイン。10年ほど前からアメリカ国内ではワインの嗜好傾向に変化が起こりました。それを象徴するのがバランスを重視したワイン造りを目指す作り手のグループであるあの IPOB (In Pursuit of Balance)。リトライはまさに IPOB を代表する生産者でした。サンフランシスコ・クロニクル紙の元ワイン担当編集長で、あのロバート・パーカーとは異なる(正反対の?)視点からバランスのとれたカリフォルニアワインの生産者を数多く紹介してきたジョン・ボネ氏の著書「The New California Wine 」の表紙を飾るのがテッド・レモンです。
テイスティングはこちらです・・・(価格は輸入元税抜価格です・・・)
Littorai Charles Heintz Vineyard Chardonnay Sonoma Coast 2014
★リトライ チャールズ・ハインツ・ヴィンヤード シャルドネ ソノマ・コースト 2014 ¥13,600
Littorai Pinot Noir Sonoma Coast 2015
★リトライ ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2015 ¥9,500
Littorai Platt Vineyard Pinot Noir Sonoma Coast 2013
★リトライ プラット・ヴィンヤード ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2013 ¥12,000
Littorai Savoy Vineyard Pinot Noir Anderson Valley 2013
★リトライ サヴォイ・ヴィンヤード ピノ・ノワール アンダーソン・ヴァレー 2013 ¥12,000
Littorai Hirsch Vineyard Pinot Noir Sonoma Coast 2013
★リトライ ハーシュ・ヴィンヤード ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2013 ¥12,000
Littorai Pivot Vineyard Pinot Noir Sonoma Coast 2013
★リトライ ピヴォット・ヴィンヤード ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2013 ¥12,000
Littorai Pivot Vineyard Pinot Noir Sonoma Coast 2009
★リトライ ピヴォット・ヴィンヤード ピノ・ノワール ソノマ・コースト 2009 参考品
チャールズ・ハインツ・シャルドネは、オクシデンタル地区の優良畑チャールズ・ハインツから(非認証オーガニック)。1994年からリトライのための7列の葡萄樹(オーガニック栽培)だけを使用。クローンはウエンテ(1983年植樹)。バレル発酵。フレンチオーク(25%新樽)にて11ヶ月、ステンレスタンクにて5ヶ月熟成。バトナージュなし。柑橘系のフレーバーを伴う綺麗な果実味。オークの風味は前面に出ず、十分にふくよかですが重くはなく、清涼感さえ感じる上品な仕上がりになっています。ALC13,2%。生産量380ケース。ソノマ・コースト・ピノ・ノワールは、シングル・ヴィンヤードにならなかったワインやプレスワインをブレンド。ステンレスタンクにて発酵。フレンチオーク(10%新樽)にて10ヶ月熟成。2015年は旱魃の影響が残り、収量は少なく、葡萄の実はかなり小粒になったとのこと。そのことがワインの色合いに表れ、やや色調の濃い色合い。赤系の果実味。華やかで旨味のある果実味で、バランス良く、重みは全く感じられない。ALC12,9%。生産量967ケース。プラット・ピノ・ノワールは、オクシデンタルの南、フリーストーンとボデガの間に位置する畑から(非認証オーガニック)。クローンはディジョン828、115、777、カレラ他。フレンチオーク(25%新樽)にて16ヶ月熟成。美しい赤系果実のフルーツ。心地良い十分な酸。ややタンニンがおとなしが、バランス良くエレガントな味わい。女性的な印象。ALC13,4%。生産量613ケース。ガローニ90点。サヴォイ・ピノ・ノワールは、メンドシーノのアンダーソン・ヴァレーの海側に位置する畑から。アンダーソン・ヴァレーでは最上の畑(非認証オーガニック)。クローンはディジョン114、115、667、777、カレラ、ポマール。フレンチオーク(25%新樽)にて16ヶ月熟成。ブラックチェリーやブラックベリーのふくよかな果実味とタンニンを持ちますが、やはり重さは感じません。冷涼地の風味。長熟の可能性はあります。ALC12,7%。生産量565ケース。ガローニ91点。ハーシュ・ピノ・ノワールは、ソノマ・コースト北部に位置する、この地を代表する畑から(非認証バイオダイナミック)。クローンはディジョン114、777、ポマール、スワン。フレンチオーク(25%新樽)にて16ヶ月熟成。クランベリーやブラックチェリーの果実味。華やかでエレガントながらしたたかな旨みを持ちます。ストラクチャーを感じさせるワインです。ですがやはり重さは感じません。ALC12,8%。生産量709ケース。ガローニ92+点。ピヴォット・ピノ・ノワールはソノマ・コーストの南、セバストポールとフリーストーンの間に位置するリトライの自社畑(非認証バイオダイナミック)。海から僅か11キロメートルでワイナリーに隣接。標高500フィートの南向き斜面で、面積は3,5エーカー。2004年植樹。クローンはディジョン114、667、777、スワン、カレラ他。フレンチオーク(25%新樽)にて16ヶ月熟成。やや薄い色あい。非常に酸がしっかりしていますが、果実味の旨味そしてタンニンも強調することなく主張します。ボリュームという印象ではなく、やはりストラクチャーのあるワインです。ALC13,1%。生産量557ケース。ガローニ92点。バック・ヴィンテージのピヴォット・ピノ・ノワールは綺麗に熟成していて、ドライな果実味をしっかりとした酸が包み込んでいました。まだまだ熟成しそうです。ピノ・ノワールは全て同じ醸造を行っています。ゆえにテロワールの違いが明確に表れます。
サインは2年前の初来日の時に頂戴しました。東部出身でフランス文学にも造詣の深い方ですからジャイアンツのジャージ見て苦笑していましたが、ジャージに友達がたくさんいたので絵顔でサインしてくださいました。テッドさんとは2度目のご対面です。少し早く会場に入りました。テッドさんいます。セミナーが始まる前にご挨拶。「テッドさん、これ覚えてますか?」「おお!覚えてるよ!」「ちょうど2年前です。」「(笑顔で)イエス。」テッドさん、ジャイアンツのジャージ覚えててくださいました(喜)。ちなみに息子さんは大のジャイアンツファンとのことです(笑)。
【テッド・レモン氏来日(リトライ)】(2015年5月26日)
【「カリフォルニアの新潮流」を牽引するジャーナリスト、ジョン・ボネ氏来日!】(2016年10月12日)