ワシントンワインの将来的方向性を牽引する生産者として注目を浴びる「グラマシー・セラーズ Gramercy Cellars 」のグレッグ・ハリントン氏が来日しました。輸入元そして日本ソムリエ協会主催のセミナーに参加してきました。
グレッグ・ハリントンは、1996年25歳の時に最年少でコート・オブ・マスター・ソムリエ協会の最高位マスター・ソムリエを取得しました(マスター・ソムリエは世界で230名で、25歳で取得の記録は現在も破られていません)。ニューヨーク、ラスベガス、シカゴなど全米各地でソムリエ、ワイン・ディレクターとして辣腕をふるい、有名レストランや各ワイン団体の主宰を務めてきました。ワイン・スペクテーター誌のベスト・グループ・レストランの最優秀賞を獲得など数えきれない輝かしいキャリアを持ちます。アメリカでは知る人ぞ知るワイン業界のキー・パーソンです。
グレッグ・ハリントンと妻のパムはニューヨーク在住中の2004年にワシントン州を訪問しました。この時ワラ・ワラ・ヴァレーのワインに高いポテンシャルと将来性を発見。グレッグはレストラン・ビジネスをリタイヤしたら、ワラ・ワラに移住し、ワインを造りたいという夢を持ちました。「5年後に」と思い描いていましたが、2004年の収穫に参加すると、ワラ・ワラのワインほど将来性に優れたところはないと確信し、なんと翌年ワシントン州に移住しました。2005年「グラマシー・セラーズ」設立。
グラマシー・セラーズは「土地の個性を表現し、新樽が強く出過ぎない、酸のバランスが良く、食事と共にあるワイン」を造り出すことが目標。グラマシーは「驚き」や「感謝」の気持ちを表す古語。ニューヨークにある唯一のプライベート・パークがグラマシー・パーク。近隣は歴史的な建物と独特の雰囲気を持つ街です。かつてグレッグの祖父母はここに住み、グレッグとパムが最初にデートしたのがこの近くの有名なレストラン。2人もこの近隣に住んでいました。思い入れの強いこのグラマシーをワイナリー名にしました。ラベル・デザインは現代モダンアートで知られるドローン・ベンシェトリットのデザインを採用しています。シアトルのワイン雑誌からはグレッグはベスト・ニュー・ワインメーカーに選出され、ワイン&スピリッツ誌からはグラマシー・セラーズは2010、2011、2012、2013、2014年度の世界トップ100ワイナリーに選出されています。
グレッグ・ハリントン氏から、ワシントン州の歴史(土壌の形成)やテロワールについてお話がありました。ワイン生産地の緯度はフランスのボルドーやローヌと同じで、日射量が多く日中は35℃にもなりますが夜は15℃となり寒暖差が大きく、葡萄は酸をキープでき育成期間が長いのが特徴です。ワシントン州はフィロキセラなし(寒さや砂土壌が原因)。現在ワイナリー数は850ほどで、生産量が一番多い品種はリースリングです。グレッグ・ハリントン氏はシラーに非常に適した土地であると考えています。
テイスティングのテーマは「ワシントンワインの差別化」です。他の生産地のワインとワシントンワインがどう違うのか、品種別に比較テイスティングをしました。テイスティングは全てブラインドで行いました。
ヴィオニエ
★2014 Gramercy Viognier Columbia Valley
★2013 Calera Estate Viognier Mount Harlan
★2014 Domaine Pierre Gaillard Condrier
シラー
★2012 Domaine Jean-Louis Chave Saint-Joseph
★2012 Wirra Wirra Vineyards RSW Shiraz McLaren Vale
★2012 Gramercy The Deuce Syrah Walla Walla Valley
カベルネ・ソーヴィニヨン
★2012 Duckhorn Cabernet Sauvignon Napa Valley
★2012 Gramercy Cabernet Saivignon Columbia Valley
★2012 Clod du Marquis
全てブラインドでテイスティング。どれがワシントンのワインでしょうかというテイスティングです。
グラマシーのヴィオニエは、コロンビア・ヴァレー北西のレイク・シュランとワラ・ワラ・ヴァレーのロックスのブレンド。トロピカルフルーツのニュアンスがあるのですが、けっして重くなく、充分な酸もあり生き生きとした味わいです。ニューワールドと伝統国(フランス)の個性を共に持ちます。75%ステンレスタンクで発酵&熟成、25%数年使用のフレンチオークで発酵&熟成。生産量500ケース。輸入元定価¥4,300(税別)。グラマシーと言えばやはりシラー。ザ・デュース・シラーは、ワラ・ワラ・ヴァレーのレ・コリナス・ヴィンヤードが主体。北ローヌのシャーブやベルナルド・フォーリーをイメージしたとか。濃縮した果実味ですが、やはり重くなく、甘みも強くなく、フィネスとエレガンスを兼ね備えた味わいです。全てのバランスが良いです。80%全房発酵。数年使用のパンチョン(500L樽)とバリック(225L樽)で熟成。生産量600ケース。WA93獲得。輸入元定価¥8,000(税別)。カベルネ・ソーヴィニヨンは、カベルネの銘醸地として有名なコロンビア・ヴァレーのセイジムーア・ヴィンヤードとヤキマ・ヴァレーのフィニー・ヒル・ヴィンヤードのブレンドで、92%カベルネ・ソーヴィニヨン、8%メルロー。レオヴィル・ラス・カーズをイメージしたとか。香りに埃や土のニュアンスがありまさにボルドーを彷彿させます。カシスやブラックチェリー、そしてハーブやスパイスを感じさせる濃縮した果実味ですが、ナパ・ヴァレーのような重さはなくスマートな仕上がりです。フレンチオーク(35%新樽)で23ヶ月熟成。WA94獲得。「シラーで一目置かれるグラマシー・セラーズであるが、カベルネ・ソーヴィニヨンも見逃す手はない!(Jeb Dunnuck)」輸入元定価¥8,000(税別)。
ワシントンワインはまさに新大陸と旧大陸の個性のいいとこどりという感じです。グラマシー・セラーズは非常にクオリティーも高く、まさしく目の離せない生産者です。(ちなみにこのブラインドテイスティングで、私はヴィオニエをフランスと間違え、シラーもフランスと間違えました。カベルネ・ソーヴィニヨンはさすがに外さないですよ。ダックホーン間違えたら怒られちゃいますからね。。。)
グレッグさんと・・・ | |
サインは首の右側に・・・ | |
今日はバタバタで、セミナー開始前にちょっとだけのご対面。グレッグさんはニューヨーク出身で、現在シアトル在住の方ですから、ジャイアンツの登場はないかと思っていましたが、輸入元に半強制的にプッシュされ(笑)。ジャイアンツのジャージを取り出すとグレッグさん苦笑。シアトルのファンですかと訊ねるとグレッグさん苦笑。「イチローは知ってるよ」と一言だけ。でも知り合いのワインメーカーのサインを見て、(しかたなく?)Go! Giants とサイン書いてくださいました。グレッグさん、あなたはいったいどこのファンなの~?