ご存じナパ・ヴァレーにおけるメルロー造りのパイオニアである「ダックホーン・ヴィンヤーズ」。そのダックホーン・ヴィンヤーズで2014年からチーフワインメーカー(醸造責任者)を務めるレネ・アリー女史が初来日しました。
先ずはアジア太平洋・アフリカ・中東地域営業部長のカール・コヴェネー氏からダックホーン・ヴィンヤーズの歴史と現在のポートフォリオについてお話がありました。
1976年ダニエル&マーガレット・ダックホーン夫妻はナパ・ヴァレー北部に20エーカーの畑と古いワイナリーを購入し、ダックホーン・ヴィンヤーズをスタートさせました。当時ナパ・ヴァレーには40ほどのワイナリーしかありませんでした。1978年に初めて葡萄を収穫し、最初のワインはカベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをリリース(各800ケース)しました。ボルドー右岸のメルローのエレガントさに魅了されていたダックホーン夫妻は、当時ブレンド用にしか使われていなかったメルローを単独で使用したワインを造り上げました。ダックホーンはナパにおけるメルロー造りのパイオニアです。ラベルにはオーナー夫妻の苗字にちなみ、鴨が描かれました。(残念ですが、昨年11月にマーガレット・ダックホーンさんが他界されました。ワイナリーで1度、日本で1度お会いしておりますが、笑顔がとても素敵な方でした。)
現在ダックホーン・ワイン・カンパニーは10のブランドを持ちます。「ダックホーン・ヴィンヤーズ(ナパ・ヴァレー)」「パラダックス(ナパ・ヴァレー)」「デコイ(ソノマ・カウンティ)」「マイグレーション(ルシアン・リヴァー・ヴァレー)」「ゴールデンアイ(メンドシーノ・カウンティ)」「キャンバスバック(ワシントン州)」です(デコイにはデコイ・リミテッド、キャンバスバックにはグリーン・ウイングというブランドがあります)。そして、”カリフォルニアのロマネコンティ” と言われた「カレラ」、ワイン・オブ・ザ・イヤー(WS誌)を獲得した「コスタブラウン」を所有します。それぞれの地域に所有する自社畑及び厳選した契約畑の葡萄からクオリティの高いワインを生産しています。1つのブランドに1人のワインメーカーを配置しています。ダックホーン・ワイン・カンパニーは2021年にニューヨーク証券取引所に新規株式公開し上場するほど大きな会社となりましたが、1つ1つのブランドはハンドメイドに近い小さなブランドであるとのことです。
そして、レネ・アリー女史からナパ・ヴァレーに所有するエステート・ヴィンヤードとワイン造りについてお話がありました。
レネ・アリー女史は大学では化学と芸術を専攻しました。1999年にロバート・モンダビ・カンパニーに入社。研究所でワイン分析官として働きました。そして2003年にダックホーン・ワイン・カンパニーに入社。ダックホーンでもワイン分析の仕事に就きましたが、徐々にワイン造りに興味を持つようになりました。あのベリンジャー一族の5世代目にあたるマーク・ベリンジャーの下でワイン造りを学び、アシスタント・ワインメーカーを務め、2014年にチーフワインメーカー(醸造責任者)に就任しました。(ちなみに、レネさんがダックホーンに入社した時、女性はマーガレットさんとレネさんの2人だけだったとか。現在ダックホーンの社員は半分強が女性だそうです。)
ダックホーンはナパ・ヴァレーに7つの自社畑を所有します、とお話してきましたが、2つ増えて現在9つの自社畑を所有しているとのことです。北から、北部は、Stout スタウト・ヴィンヤード (ハウエル・マウンテン)、 Three Palms スリーパームス・ヴィンヤード(カリストガ)、Monitor Ledge モニター・レッジ・ヴィンヤード(カリストガ)です。スリーパームス・ヴィンヤードのお話は後ほど。中央部は、Marlee’s マーリーズ・ヴィンヤード(セントヘレナ)、Patzimaro パッツィマロ・ヴィンヤード(セントヘレナ)、そして新しい自社畑の Wolf ウォルフ・ヴィンヤード(セントヘレナ)です。ウォルフ・ヴィンヤードの葡萄(ソーヴィニヨン・ブランとセミヨン)は30年前から使用していましたが、2022年にこの畑を取得しました。マーリーズ・ヴィンヤードはワイナリーの前に広がる畑で、ソーヴィニヨン・ブランが栽培されています。創業者マーガレットさんのニックネームから名付けました。南部は、Rector Creek レクター・クリーク・ヴィンヤード(ヨントヴィル)、Cork Tree コーク・ツリー・ヴィンヤード、そして新しい自社畑の El Veredicto エル・ヴェレディクト・ヴィンヤードです。エル・ヴェレディクト・ヴィンヤードは2021年に取得した畑で、シャルドネ、ヴィオニエ、ピノ・ノワール、シラーなどの冷涼地品種が栽培されています。レクター・クリーク・ヴィンヤードはダックホーンにおいて2番目に誕生したブランド「パラダックス」のワイナリーの周りに広がる畑です。それぞれの畑の土壌や特徴、植樹されている品種についてお話がありました。
ダックホーン・ヴィンヤーズは、初ヴィンテージのワインからスリーパームス・ヴィンヤードのワインを造り出しています。カリストガの南に位置するスリーパームス・ヴィンヤードはカリフォルニアでも指折りのメルローのシングル・ヴィンヤードとして知られる伝説的存在の畑です。その名の通り畑には象徴的な3本のヤシの木が植えられています(このヤシの木は60年代に植えられたものとか)。ダックホーン・ヴィンヤーズは、2011年からスリーパームス・ヴィンヤードの葡萄の専売契約をしていましたが、2015年長年の夢を叶えスリーパームス・ヴィンヤードを買い取り自社畑としました。2017年4月デカンタ誌の “世界が認めるメルロー6本” であのペトリュスと共に2014年スリーパームス・ヴィンヤード・メルローが選ばれました。そして2011年11月ワイン・スペクテーター誌の年間トップ100ワインで2014年スリーパームス・ヴィンヤード・メルローが見事1位に輝き、ダックホーン・ヴィンヤーズは遂にワイン・オブ・ザ・イヤーを獲得しました。レネ・アリー女史が醸造責任者として初めて造り上げたスリーパームス・ヴィンヤード・メルローがワイン・オブ・ザ・イヤーを獲得したのです。
レネ・アリー女史がワイン造り、そしてワインに求めるものは・・・「伝統にのっとったワイン造り」をすること。「食事と共に楽しめるワイン」であること。「ヴィンテージを表すワイン」であること。少し生産量の多いワインは、なんと200以上のキュヴェからセレクトしてブレンドするとのことです。また22社の樽メーカーと契約していますが、50の違うタイプの樽をセレクトし使用しているとのことです。良質なワインを造り出す、という創業者の思いを大切にしているレネ・アリー女史です。
上記の写真は、セミナー終了直後に、アイコンタクトと口パクで、写真撮っていいですか・・・いいわよ・・・みたいな感じでパチリした写真です(苦笑)。
テイスティングはこちらです・・・(価格は輸入元税抜き上代税価格です・・・)
Duckhorn Vineyards Sauvignon Blanc North Coast 2021
★ダックホーン ソーヴィニヨン・ブラン ノース・コースト 2021 ¥4,200
Duckhorn Vineyards Chardonnay Napa Valley 2021
★ダックホーン シャルドネ ナパ・ヴァレー 2021 ¥5,200
Duckhorn Vineyards Merlot Napa Valley 2020
★ダックホーン メルロー ナパ・ヴァレー 2020 ¥8,500
Duckhorn Vineyards Three Palms Vineyard Merlot Napa Valley 2019
★ダックホーン スリーパームス・ヴィンヤード メルロー ナパ・ヴァレー 2019 ¥14,500
Duckhorn Vineyards Cabernet Sauvignon Napa Valley 2019
★ダックホーン カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2019 ¥9,500
Duckhorn Vineyards Patzimaro Vineyard Cabernet Sauvignon Napa Valley 2016
★ダックホーン パッツィマロ・ヴィンヤード カベルネ・ソーヴィニヨン 2016 ¥15,000
オバマ大統領就任昼食会でサーブされ大きな話題となったソーヴィニヨン・ブランです。1982年から生産しています。ボルドーブランを意識して、セミヨンをブレンドするのがダックホーンのスタイルです。ダックホーンは100%ナパ・ヴァレーの葡萄でワインを造り出してきましたが、なんと2021年のソーヴィニヨン・ブランは、54%ソノマ、45%ナパ、1%メンドシーノです。そして樽発酵と樽熟成をしてきましたが、2021年は92%をステンレスタンクで、8%をフレンチオークで熟成しました。2020年そして2021年は非常に葡萄の収量が少なく、苦肉の策?としてこのスタイルとなったようですが、クオリティは決して落としてはいない、ということでした。2012年に誕生したシャルドネです。カーネロス、オーク・ノール、アトラス・ピークなどの冷涼地区の葡萄を使用しています。2021年ナパ・ヴァレー・シャルドネは、90%を樽発酵、10%をステンレスタンク発酵で、フレンチオーク(40%新樽)で熟成。シャルドネは濃くも薄くも甘くも辛くもどのようなスタイルにも仕上げられる便利な(苦笑)葡萄ですが、樽の風味と果実味の風味がバランスよく表現されているスタイルに仕上げました。醸造は初期から変わっていませんが、近年非常にエレガントになっていると思います。女性だからということではなく、樽と果実味のバランスの取れたこのスタイルが彼女の求めるものなのだと思います。
ダックホーンを支える主力ワインであるナパ・ヴァレー・メルローです。葡萄はカリストガ、ラザフォード、ヨントヴィルなどから。エステートの比率は15~20%ほどです。2020年は大きな山火事があった年ですが、山火事は8月と9月の2回あり、8月の山火事の影響は受けることなく、9月の山火事の前には収穫は終わっていたとのことです。2020年ナパ・ヴァレー・メルローは、80%メルロー、17%カベルネ・ソーヴィニヨン、2%カベルネ・フラン、1%プティ・ヴェルドで、90%を樽発酵、10%をステンレスタンク発酵で、フレンチオーク(40%新樽)で熟成。熟した赤黒系果実はとてもリッチでエレガントです。他のブランドのメルローと比べると、ダックホーンはカベルネ・ソーヴィニヨンのブレンド比率が高いのですが、そのことがストラクチャーを作り出していますね。そしてダックホーンのフラッグシップワインであるスリーパームス・ヴィンヤード・メルローです。2019年スリーパームス・ヴィンヤード・メルローは、90%メルロー、6%カベルネ・ソーヴィニヨン、1%カベルネ・フラン、1%マルベックで、フレンチオーク(75%新樽)で18ヶ月熟成。20ほどのキュヴェをブレンドしました。エレガントですがエネルギッシュでフルボディ。今飲んでも十分に美味しさを感じますが、寝かせたいワインでもあります。メルローのイメージが強いダックホーンですが、カベルネ・ソーヴィニヨンも高い評価を得ています。葡萄は、カリストガ、ラザフォード、オークヴィルなどカベルネ・ソーヴィニヨンのメッカと言われる地区から。2019年ナパ・ヴァレー・カベルネ・ソーヴィニヨンは、83%カベルネ・ソーヴィニヨン、13%メルロー、2%カベルネ・フラン2%プティ・ヴェルドで、フレンチオーク(50%新樽)で熟成。カシスやダークベリーのアロマ。スパイスやドライハーブも。凝縮した果実味としっかりとした骨格を持つ、ナパ・ヴァレーらしいカベルネ・ソーヴィニヨンです。
最後にスペシャルワインです。なかなか日本市場には出てこないシングル・ヴィンヤード・ワインです。2016年パッツィマロ・ヴィンヤード・カベルネ・ソーヴィニヨンです。パッツィマロ・ヴィンヤードはセントヘレナの西側に位置する畑で、隣接するのが Spottwoodw スポッツウッド、Madrona Ranch マドロナ・ランチという、この地区最高のロケーションに位置する畑です。 2016年は、76%カベルネソーヴィニヨン、19%メルロー、5%カベルネ・フランで、フレンチオーク(85%新樽)で18ヶ月熟成。パッツィマロ・ヴィンヤードの葡萄は樹齢30年以上で、ダックホーンの自社畑の中で最も安定して素晴らしい葡萄がなる畑とのことです。ダックホーンのシングル・ヴィンヤード・カベルネ・ソーヴィニヨンの中で一番濃く一番リッチなワインとのことです。今熟成の第2段階の入口でしょうか。
セミナー終了後レネさんにご挨拶に。「はじめまして。カリフォルニアワインに特化した、小さなワインショップをしています。」「はじめまして。レネ・アリーです。」というかたぐるしい出だしで(苦笑)。「あの~私のシャツを見てください。」とジャイアンツのジャージを取り出すと「オーマイガー。なんなのこれ?」と。「全てカリフォルニアのワイナリーのオーナーやワインメーカーのサインです。ここを見てください。(創業者の)マーガレットさん、(社長の)ライアンさん、(副社長の)ピートさん、(あなたの師匠の)マークさん、(前ワインメーカーの)ビルさんです。サイン頂戴できますか?」「するわよ。するわよ。凄いわね。ベス・ノヴァックね。メリー・エドワーズね。」ジャージを見渡して驚いて、マーガレットさんのサイン見て微笑んで、笑顔でサイン書いてくださいました。サインはマーガレットさんとマークさんの間にめっちゃ小さい字で(笑)。やはり初めてジャージを見たカールさんも驚いて写真パチパチ撮ってました(苦笑)。
「ピートさんによろしく伝えてくださいね。」「必ず伝えるわよ。」レネさん、なんとなく女優の内田有紀さんに似てるような(苦笑)。わりと早口だったので全く耳が追い付きませんでしたけど(苦笑)。Go! Duckhorn and Go! Giants と叫びながら(大苦笑)記念撮影しました。遂にお会いできました(嬉涙)。
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#Wine of The Year 2017
#Napa Valley
【最近親しいワイン仲間内でなぜかカベルネ・フランが話題になっています(苦笑)・・・】(4月8日)