6年振りの来日です。多くの名誉に輝く、天才醸造家と言われたポール・ホッブス氏が来日しました。輸入元主催のセミナーに参加しました。(個人的には9年振りのご対面になりました。)
Mr. Paul Hobbs | |
ポール・ホッブス氏はニューヨーク州北部の生まれ。家族経営で農場を営む4代目でした。家にはリンゴなどの果樹園がありましたが、果樹園が葡萄畑に変わると葡萄に興味を持ったポール・ホッブスは葡萄の手入れを自ら手伝うようになりました。ノートルダム大学在学中にクリスチャン・ブラザーズで醸造責任者を務めた教授の下で世界のワインを体験したポール・ホッブスは1975年に UC デイヴィス大学院へと進みました。この時オーク樽熟成に関する論文を書き上げたポール・ホッブスはすでにワイン産業界の人々から大きな注目を集めていました。1978年ロバート・モンダビ・カンパニーに入社。すぐに醸造家としてデビューし、翌年1979年にオパス・ワンの醸造チームに選ばれ、オパス・ワンのファースト・ヴィンテージの仕込みに携わりました。1981年から4年間はヘッドとしてオパス・ワンの醸造責任者を務めます。1985年ポール・ホッブスはソノマの歴史あるシミ・ワイナリーにアシスタント・ワインメーカーとして迎え入れられました。新しいスタイルを取り入れたシミのワインは雑誌や評論誌で高く評価され、停滞していたシミは新たな復活を遂げました。その後副社長兼ワインメーカーを務めました。
1991年何人かのパートナーと一緒に「ポール・ホッブス・ワイナリー」を設立。この時代にポール・ホッブスをサポートした1人がハイド・ヴィンヤードのラリー・ハイドでした。少量生産でシングル・ヴィンヤードのスーパープレミアムワインを造り始めました。また、ピーター・マイケル、ヴァイン・クリフ、ルイス、レアードなどのトップ・ワイナリーのコンサルタントを務めるようになりました。また、アルゼンチンを訪問した時にそのユニークなテロワールとマルベックに魅了されたポール・ホッブスはアルゼンチンでもワイン造りを始めました。2000年12月コノシュアーズガイドでワインメーカー・オブ・ザ・イヤーの名誉に輝きました。2004年ザ・クオータリー・レヴュー・オブ・ワインズでモースト・インポータント・ワインメーカー・イン・カリフォルニアに選出されました。ロバート・パーカーからはワイン・パーソナリティ・オブ・ザ・イヤーに2度選出されています。2002年ベクストファー・トゥー・カロン・カベルネ・ソーヴィニヨンがパーカー100点を獲得。2008年ルシアン・リヴァー・ヴァレー・ピノ・ノワールがワイン・スペクテーター誌年間トップ100ワインでトップ10入り(第7位)しました。ワイン・スペクテーター誌でマスター・オブ・シャルドネとして賞賛されました。2013年フォーブス誌で The Steve Jobs of Wine と呼ばれました。非常に多くの名誉に輝くポール・ホッブス氏。そして天才的と言われる醸造を行うポール・ホッブス氏です。現在は、故郷ニューヨーク州で、そしてアルゼンチン、フランス、アルメニアなどでもワイン造りを行っています。
ポール・ホッブス氏から上記に記述した生い立ちそしてモンダビ時代そしてワイナリー設立から現在までのお話がありました。またワイン醸造のお話もありました。テイスティングは下記のワインです。今回はソノマに新しく誕生した自社畑とナパに新しく誕生した自社畑にスポットを当てての試飲となりました。(価格は輸入元上代税抜き価格です。)
- Paul Hobbs -
Chardonnay Ross Station Estate Russian River Valley 2021
★シャルドネ ロス・ステーション・エステート ルシアン・リヴァー・ヴァレー 2021 ¥18,500
Chardonnay Cuvee Louisa Goldrock Estate West Sonoma Coast 2021
★シャルドネ キュヴェ・ルイ―ザ ゴールドロック・エステート ウエスト・ソノマ・コースト 2021 ¥33,000
Pinot Noir Goldrock Estate West Sonoma Coast 2021
★ピノ・ノワール ゴールドロック・エステート ウエスト・ソノマ・コースト 2021 ¥21,000
Pinot Noir George Menini Estate West Sonoma Coast 2021
★ピノ・ノワール ジョージ・メニニ・エステート ウエスト・ソノマ・コースト 2021 ¥21,000
Cabernet Sauvignon Nathan Coombs Estate Coombsville Napa Valley 2020
★カベルネ・ソーヴィニヨン ネイサン・クームス・エステート クームスヴィル ナパ・ヴァレー 2020 ¥103,000
Cabernet Sauvignon Beckstoffer To-Kalon Vineyard Oakville Napa Valley 2019
★カベルネ・ソーヴィニヨン ベクストファー・トゥ・カロン・ヴィンヤード オークヴィル ナパ・ヴァレー 2019 ¥135,000
醸造において最も重要とすることが3つあるとポールさんはお話されました。1つは土着酵母を使用すること。2つめはファイニング。清澄はしない。3つめはフィルター。濾過はしない。特に2つめと3つめは畑の個性を失う要因になると考えています。そしてワインを安定させるものが樽の存在であると。樽はフレーバーを保ち、ワインを安定させ、ゆるやかな酸化を起こします。それが高い品質を保つことに繋がると。樽のチェックは板1枚まで非常に厳しくチェックするとのことです。そして醸造を行う場所は常に清潔であることが必要と。
Ross Station Estate | |
ワイナリーのあるルシアン・リヴァー・ヴァレーに誕生した新しい自社畑、そして注目の産地であるウエスト・ソノマ・コーストに誕生した新しい自社畑からのシャルドネとピノ・ノワールです。収穫は夜間に手摘みで行います。シャルドネは基本全房で発酵。自然のマロラクティック発酵を促し、フレンチオークで熟成します。ロス・ステーション・エステートはワイナリーのすぐ南に位置する畑です。土壌はこの地特有のゴールドリッジ。2008年に植樹。ロス・ステーション・エステート・シャルドネは、クローンはハドソン・ウエンテとマウント・エデンで、夜間に収穫された冷たい葡萄を全房でプレス。土着酵母で樽発酵。自然なマロラクティック発酵を促し、フレンチオーク(28%新樽)で15ヶ月熟成。シュール・リー熟成。無清澄そして無濾過。メイヤーレモンの皮。砕けた岩のニュアンス。メリハリのある果実味を爽やかな酸が包み込みます。
Goldrock Estate | |
ゴールドロック・エステートはウエスト・ソノマ・コーストに属するアナポリスに位置する畑です。土壌はゴールドリッジ。2005年に植樹。ルイ―ザはポール・ホッブス氏の末娘の名前です。ゴールドロック・エステート・キュヴェ・ルイ―ザ・シャルドネは、クローンは76で、同じく全房プレス、土着酵母で樽発酵、そしてフレンチオーク(33%新樽)で15ヶ月熟成。シュール・リー熟成。無清澄そして無濾過。白い花のアロマ。スパイスの風味。繊細な味わいの中にアプリコットやリンゴの皮などが感じられます。酸の輪郭がはっきりしていて、塩味を感じるのが特徴的です。同じくゴールドロック・エステートからのピノ・ノワールです。ピノ・ノワールは基本除梗しますが、15%程度を全房で発酵します。自然のマロラクティック発酵を促し、フレンチオークで熟成します。ゴールドロック・エステート・ピノ・ノワールは、クローンは115と777で、冷たい葡萄を手で選別し、土着酵母で発酵。5日間の低温浸漬。17日間のマセレーション(発酵を含む)。子樽の中で自然のマロラクティック発酵。フレンチオーク(29%新樽)で15ヶ月熟成。無清澄そして無濾過。鮮やかなルビー色。野生のイチゴやラズベリーのアロマ。僅かな土のニュアンス。心地良い舌触り。鮮やかな果実味を綺麗な酸が包み込みます。ジョージ・メニニ・エステートはルシアン・リヴァー・ヴァレーの南西の端に位置する畑で、ボデガ・ベイから冷たい風が吹き込む冷涼なエリアにあります。土壌はゴールドリッジ。ジョージ・メニニはこの畑の前所有者の名前です。2015年に植樹。ジョージ・メニニ・エステート・ピノ・ノワールは、クローンはカレラ、マウント・エデン、777、943で、15%を全房で土着酵母で発酵。ステンレス製小型開放式発酵槽。5日間の低温浸漬。14日間のマセレーション(発酵を含む)。優しくパンチダウン。自然のマロラクティック発酵。フレンチオーク(25%新樽)で9ヶ月熟成。無清澄そして無濾過。樽はカデュ、ルロア、ラトゥール、ルモン、タランソー、ヴィカールを使用。深いルビー色。ブラックチェリー、ブラックベリーのアロマ。バニラの風味も。ジューシーながら赤黒系のしっかりとした果実味。ふくよかですがエレガントです。
AVA Coombsville | |
Nathan Coombs Estate | |
そしてナパ・ヴァレーに新しく誕生した自社畑からのカベルネ・ソーヴィニヨンです。今注目の AVA クームスヴィルに誕生したネイサン・クームス・エステートです。カーネロスの北東に位置する AVA クームスヴィル。2011年承認のナパ・ヴァレーで最も新しいネステッド AVA です。ナパ・ヴァレーで最も冷涼な地域で、シャルドネやピノ・ノワールの産地でしたが、近年カベルネ・ソーヴィニヨンの生産が増えています。岩の多い火山性土壌で、ワインに独特のミネラルを与えています。ネイサン・クームス・エステートは2002年に初めての植樹。コルドン仕立て。台木は110rと3309。ネイサン・クームス・エステート・カベルネ・ソーヴィニヨンは、100%カベルネ・ソーヴィニヨンで、クローンは337と4です。冷たい葡萄を手で選別し、土着酵母で発酵。30日間のマセレーション(発酵を含む)。ポンプオーバーとデレスタージュ。自然なマロラクティック発酵。フレンチオーク(96%新樽)で18ヶ月熟成。無清澄そして無濾過。瑞々しく熟したブラックベリーやブラックカラントのアロマ。ダークチョコレート。レザー、そして甘いタバコのニュアンス。綺麗に濃縮した黒い果実味。ダイナミックですが繊細さを持ち合わせます。
そしてナパ最上の畑である、オークヴィルのトゥ・カロン・ヴィンヤードのカベルネ・ソーヴィニヨンです。1868年ハミルトン・ウォーカー・クラブがこの地を購入し葡萄を植えました。ポール・ホッブスが使う葡萄はその畑の中でも最も良い場所にある区画から。最高の区画 c2a(1,7エーカー)と c2b(1,86エーカー)から。収量は1エーカー当たり2,39トン。ベクストファー・トゥ・カロン・ヴィンヤード・カベルネ・ソーヴィニヨンは、100%カベルネ・ソーヴィニヨンで、クローンは4です。土着酵母で発酵。30日間のマセレーション(発酵を含む)。ポンプオーバーとデレスタージュ。自然なマロラクティック発酵。フレンチオーク(86%新樽)で20ヶ月熟成。樽はダナジュ―、タランソー、バロン、ブート、ルロアを使用。無清澄そして無濾過。深いガーネット色。ブルーベリー、ブラックベリーのアロマ。黒鉛。ドライハーブのニュアンス。凝縮しながらも美しい赤黒系の果実味。葡萄の素晴らしさと醸造の素晴らしさから生み出された見事な味わいです。ポール・ホッブスは2002年ヴィンテージでパーカー100点を獲得しています。
セミナー終了後にご挨拶に。「ご無沙汰しております。私を覚えていますか?」「???」(覚えているわけがないですよね。。。苦笑)仕方がないので、ジャイアンツのジャージを取り出すと「あぁあぁあぁ」という感じです。「ポールさんが前回来日したのは2018年でしたが、その時はお会いできませんでした。ですが、私、その年に(愛娘)アグスティナさんにお会いしました。そしてサイン頂戴しました。」ポールさんにアグスティナさんのサインを見せるとポールさん大笑いでした。「グッジョブ!」ですって。
ギリギリ見えます。サインは、FRAN の N の下にアグスティナさんが Go! Giants と(2018年9月)。その下にポールさんが No! Yankees Go! Giants と(2010年11月)。ちなみに親子でサインを頂戴したのはこれで8組になりました(苦笑)。
#Paul Hobbs Winery
#Chardonnay #Pinot Noir
#Russian River Valley #Sonoma Coast
#Cabernet Sauvignon
#Napa Valley
【文句のつけようのない美味しさです・・・愛娘オグスティナさんとお会いできました・・・】(2018年9月10日配信)
ブログ【オグスティナ・ホッブスさん来日!(ポール・ホッブス)】(2018年9月5日)