ご存じ”カリフォルニアのロマネ・コンティ”と言われる「カレラ」のジョシュ・ジェンセン氏と、”ナパ・ヴァレーのシャトー・マルゴー”と言われる「スポッツウッド」のべス・ノバック女史が来日しました。両ワイナリーのワインを取り扱う輸入元V社のセミナーに参加しました。
今回は、非常に貴重な1980年代のワインから最新ヴィンテージのワインまでを比較試飲しました。試飲数が多いため、ジョシュ・ジェンセン氏そしてべス・ノバック女史からのお話は短くご挨拶程度のものとなりました。ソノマ在住25年以上の、ワインジャーナリストのカフマン恵美子さんから両ワイナリーについて簡単にお話があり、その後すぐに試飲が始まりました。
ジョシュ・ジェンセンはドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティなどでワイン造りを学び帰国。当時カリフォルニアでは不可能と言われたピノ・ノワールを造るために土地を探しました。2年の歳月を経て見つけた場所はサンフランシスコの南、サン・ベニート群のマウント・ハーランでした。カリフォルニアで最も高い(標高2,200フィート)、最も冷涼な場所で、その地の土壌はピノ・ノワール造りに必要不可欠な石灰質が豊富に含まれた土壌です。1975年入植。最初の畑ジェンセン・ヴィンヤードが誕生しました。カレラの名前は石灰岩でできた「窯」に由来します。現在6つのエステート・ヴィンヤードからピノ・ノワールを生産しています。
セントヘレナの西端。スポッツウッドに現在も存続する石造りのワイナリーとビクトリア朝の邸宅は19世紀末に造られたものです。現在CEO そして社長であるべス・ノバックのご両親のジャック&メアリー・ノバック夫妻が敷地と邸宅を1972年に購入。スポッツウッドの名前は前所有者のスポッツ・ファミリーに由来します。1982年に最初のカベルネ・ソーヴィニヨンを醸造。ヴィンヤード・マネージャーはデヴィッド・エイブリュー、ワインメーカーはトニー・ソータという当時ナパ・ヴァレーのトップの2人によって造り出されました。1985年からは当時としては珍しいオーガニック栽培を始めました。2010年ヴィンテージでワイナリー初のパーカー100点を獲得しました。
さてテイスティングです・・・まずはカレラから・・・
Jensen Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 1982
★ジェンセン・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 1982
Reed Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 1987
★リード・ヴィンヤード ピノ・ノワールマウント・ハーラン 1987
Selleck Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 1992
★セレック・ヴィンヤード ピノ・ノワールマウント・ハーラン 1992
Mills Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 1994
★ミルズ・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 1994
Jensen Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 2002
★ジェンセン・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 2002
de Villiers Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 2009
★ド・ヴィリエ・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 2009
Jensen Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 2012
★ジェンセン・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 2012
Ryan Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 2012
★ライアン・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 2012
Mills Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 2014
★ミルズ・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 2014
Selleck Vineyard Pinot Noir Mt. Harlan 2014
★セレック・ヴィンヤード ピノ・ノワール マウント・ハーラン 2014
貴重なヴィンテージが並びました。82年ジェンセン(G92)。透けた色調でレンガ色。枯れた落ち葉。味わいに枯れた印象はありませんが、果実味は僅か。ピノ・ノワールを造り始めて5年目のワインということで、樹齢もまだ若く果実の風味は僅かなのかも。しかし状態は良好です。「35年経過を考えると状態は良好かと。でもこれ以上熟成はしないだろう。もしこのヴィンテージを所有しているならもう開けたほうが良いだろう。(ジョシュ・ジェンセン)」87年リード(P87)。赤黒の色調も見えるがレンガ色が占める。お茶の葉。骨格がしっかり残り深みのある味わい。82年と比べると87年はやや果実味が残っている。ここから90年代へ。80年代と比べると90年代は赤黒い色調がはっきり残っています。92年セレック(P86)。グリーンハーブ。熟した赤黒系の果実味ですが、まだ生き生きとしている。94年ミルズ(P90)。グリーンハーブ。こちらもしっかりとした色調と果実味。オーク?の風味あり。2000年代に入ると色調は黒がかなり占める。02年ジェンセン(P93)。プラム、カシス。十分な果実味。まだ若い印象を受け、フレッシュ感さえ感じる。まさに熟成途中の印象。09年ド・ヴィリエ(G96+)。1997年植樹の、デビュー6番目のピノ・ノワール。プラム、カシス。色調も果実味も非常にクリーン。こちらも十分な果実味がある。そしてカリフォルニアのグレート・ヴィンテージとなった12年と14年です。色調は赤黒の中にまだ若さを示す紫が見えます。12年ジェンセン(G96)。干しブドウ。バニラ。まだまだ強い果実味。すでに樹齢は36年になり、凝縮感のある果実味になりました。12年ライアン(G93)。1998年植樹。ワインのデビューはド・ヴィリエより早いため5番目のピノ・ノワールと言われる。ベリー系のドライフルーツ。かなり黒が占める色調の若い果実味。14年ミルズ。ベリー系のドライフルーツ。非常に濃縮した柔らかい果実味。樽出し間もないような印象さえ受ける。14年セレック。ベリー系のドライフルーツ。こちらも濃縮した柔らかい果実味。ミルズと比べると凝縮感や強さを感じる。近年干ばつの影響を受け、特に2014年は例年に比べ非常に少ない生産量となりました。80年代は幸運にも良好な状態で、落ちた印象はなく感動的な味わいでした。貴重な試飲となりました。90年代はまだまだ果実味が残り元気な状態です。ヴィンテージ差はありますが、見事に熟成するピノ・ノワールですから、カレラの飲み頃を知るには本当に良い試飲となりました。Gはアントニオ・ガローニ、Pはロバート・パーカーの評価です。
そしてスポッツウッドです。
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 1983
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 1983
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 1988
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 1988
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 1992
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 1992
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 1996
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 1996
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 2003
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2003
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 2006
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2006
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 2011
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2011
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 2012
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2012
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 2013
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2013
Estate Cabernet Sauvignon Napa Valley 2014
★エステート カベルネ・ソーヴィニヨン ナパ・ヴァレー 2014
こちらも貴重なヴィンテージが並びました。スポッツウッドは1982年の1,200ケースのエステート・カベルネ・ソーヴィニヨンでスタート。83年カベルネ(P88)は2度目のヴィンテージです。非常にしっかりとした赤黒の色調です。ふちにかすかなオレンジ色が。ドライハーブ。冷涼な年だったためハーブやスパイスの風味が占めるがいわゆるグリーンな印象はない。そしてボルドーの熟成に見られるような枯れた果実味ではない。若さをも感じる素晴らしい味わいです。スポッツウッドは僅かなカベルネ・フランやプティ・ヴェルドをブレンドしますが、82年と83年は100%カベルネ・ソーヴィニヨンです。88年カベルネ(P84)。ドライハーブ。暑い年だったためか、香りの印象とは反対に熟した柔らかい果実味。92年カベルネ(P99)。フィロキセラの被害にあう前のカベルネ。ドライハーブ。全ての要素が非常に上手にコントロールされた年で、まだまだパワーを持つ果実味です。96年カベルネ(P90+)。オリジナルの葡萄とフィロキセラの被害後の新しい葡萄を使用。ドライハーブ。少しアルコール感を感じるような、パワーも持ち合わせた果実味。暑い天候の影響か。そして2000年代へ。03年カベルネ(P95)。ドライフルーツ。ここから少し香りの印象が変わる。01年(P98+)、02年(P100)のグレート・ヴィンテージ後の03年は非常に順調に葡萄が育った年。果実味と心地良い酸が非常にバランスのとれた味わい。06年カベルネ(P96)。ドライフルーツ。この年も05年(P98+)と07年(P99)のグレート・ヴィンテージに挟まれた年。目立たないヴィンテージとなったが、実は小粒な葡萄から凝縮した味わいが生まれた年。タンニンがしっかりとした印象。まだまだ熟成途中。そして2010年以降へ。11年カベルネ(P94)。ドライハーブ。近年稀にみる冷涼な年。ドライな果実味。少しのグリーンさ。カリフォルニアとしてはタイトでドライな印象ですが、ボルドーファンには受け入れられるのかも。12年カベルネ(P99)。まだ若さを感じる色調。ブルーベリー、ブラックカラントの香りと風味。リッチで濃縮した果実味。グレート・ヴィンテージならではのふくよかさ。13年カベルネ(P99+)。引き続きグレートなヴィンテージ。ダークフルーツ。小粒の葡萄の年。全ての要素が整い、完成度の高さを感じる。12年より長期熟成のポテンシャルは高そう。14年カベルネ(P96+)。ダークフルーツ。樽出し間もないような濃縮した果実味。バランス良く、今でも楽しめるような味わい。全て良好な状態です。80年代の若々しい印象には驚きです。トニー・ソータによって造り上げられたスポッツウッドはその後女性ワインメーカーに受け継がれました。1982年から1991年まではトニー・ソータとミア・クライン(3大女性醸造家の1人で、90年と91年は醸造に参加)。1992年から1996年はパム・スター。1997年から2005年はローズマリー・ケークブレッド。2006年から2010年まではジェニファー・ウイリアムズ。ナパ・ヴァレーらしい果実味を持ちながらもエレガントさも持ち合わせるスポッツウッド。”ナパ・ヴァレーのシャトー・マルゴー”と例えられる理由はここにあるのかもしれません(残念ながら2011年からは男性ワインメーカーです・・・笑)。スポッツウッドの生産量は少ない年で約2,000ケース、多い年で約3,000ケースから約4,000ケースです(5,000ケースを超えた年もありましたが)。ファミリー・エステートならではの生産量です。
カリフォルニアにはボルドーのような格付けはありません。もしカリフォルニアに格付けがあったなら、カレラもスポッツウッドも間違いなく California First Growth Wine (格付1級)です。テイスティングの時間も短かったため、ジョシュ・ジェンセン氏もべス・ノバック女史も「今回はカリフォルニアのテロワールを感じて欲しい。そして時代の流れの中でどういう風に味わいが変化してきたかを感じて欲しい。」と述べていました。参加者から興味深い?今さらの?危ない?質問が出ました。「カリフォルニアのロマネ・コンティ、カリフォルニアのシャトー・マルゴーと言われることをどう思いますか?」ジョシュ・ジェンセン氏は「そう言われることは光栄です。でもロマネ・コンティを造る気は全くないよ(苦笑)。」べス・ノバック女史は「素敵な褒め言葉です。逆にマルゴーが”メドックのスポッツウッド”って呼ばれるようになったら素敵ね(苦笑)。」さすがのコメントです(笑)。
セミナーが始まる前にちょっとだけご挨拶。ジョシュさんとはもう何度目のご対面か分かりません。挨拶しようと近づくと、目と目が合いジョシュさんなぜか笑ってましたが(笑)。べスさんとは3度目のご対面。前回(2014年来日)サインを頂戴しました。ジャージをお見せすると、ジャイアンツファンのべスさんめっちゃ喜んでました(笑)。そしてセミナー終了後に恒例のツーショット撮影です。
ジョシュさんと・・・ | |
べスさんと・・・ | |
そしてさらに素敵なお2人とも久しぶりのご対面でした。元ローレル・グレンのワインメーカーのレイ・カフマンさんともご対面。本日通訳を務めた、ワインジャーナリストでレイさんの奥様の恵美子さんともご対面(ナパ・ツアーで大変お世話になったお2人です。ワイナリーも訪問しました。)。今回べスさん、恵美子さん、レイさん、そして私で、「チーム・スポッツウッド」結成です(大笑)。。。
【2014年カレラ・ジェンセン入荷!(申し訳ありません、販売に条件がございます・・・)】(2017年5月12日)
【2010年で遂にパーカー100点を獲得した「スポッツウッド」です・・・こちらも非常に評価の高い2012年が入荷です・・・】(2016年10月6日)